がんばりすぎない教科書

がんばりすぎないための「終わり」の設定:自分を労わる境界線の引き方

Tags: 完璧主義, セルフケア, 時間管理, 休息, 自己肯定感

完璧を目指し、常に「まだできることがある」「もっとやらなければ」と考えてしまうと、心も体も休まる暇がありません。家事、育児、仕事、どれも中途半端にはしたくないという真面目な気持ちが、かえって自分を追い詰め、疲弊させてしまうことがあります。

終わりのないタスクに疲れていませんか

私たちは、目の前のタスクが無限に続くかのように感じ、どこで終わりにして良いのか分からなくなることがあります。例えば、家事であれば、掃除を終えても別の場所が気になり、料理をしても献立の改善が頭から離れない、といった具合です。仕事においても、一つ課題をクリアすれば、次々に新しい課題が見つかることは珍しくありません。

このように、「もっと良くしたい」「完璧にしたい」という気持ちが強いほど、タスクに「終わり」が見えにくくなります。そして、自分では気づかないうちに、精神的な余裕も時間的な余裕も削り取られ、心身の不調につながってしまうことがあります。

なぜ「終わり」を決めることが難しいのでしょうか

「終わり」を意識的に設定し、そこで手を止めることが難しいと感じる背景には、いくつかの共通した心理があります。

一つは、「がんばり続けないと、良い結果は得られない」という思い込みです。手を抜くことは悪いこと、怠惰である、という価値観が根底にあると、たとえ疲れていても「まだやれるはず」と自分を鼓舞し、無理をしてしまいがちです。

また、「完璧ではない自分」を受け入れることへの抵抗も挙げられます。不完全な状態で終わらせることに罪悪感を抱いたり、「もっとできたはずなのに」と後悔したりすることを恐れる気持ちが、「終わり」を決めることをためらわせる要因になることがあります。

しかし、「終わり」を決めることは、決して「諦めること」や「手を抜くこと」ではありません。むしろ、自分自身を大切にし、持続可能な生活を送るための賢明な選択と言えるでしょう。

「終わり」を決めることの価値

日々のタスクに意識的に「終わり」を設定することは、あなたの生活に多くの良い変化をもたらします。

まず、心身の疲労を軽減し、休息を確保することができます。十分な休息は、集中力や創造性を高め、結果として日々のパフォーマンス向上にも繋がります。

次に、自分自身の時間を取り戻し、精神的なゆとりを生み出すことができます。「終わり」を設定することで生まれた時間は、趣味や好きなことに使ったり、ただ何もせずに過ごしたりする贅沢な時間となります。このゆとりが、心の余裕を育み、ストレスを軽減する効果が期待できます。

そして、最も重要なこととして、「終わり」を決めることは、自分を労わり、自己肯定感を育む行動であると言えます。完璧ではない自分を受け入れ、今日の自分に「よくがんばったね」と声をかける練習になるのです。

日常で「終わり」を設定するための具体的なヒント

がんばりすぎないための「終わり」の境界線を引くには、日常生活の中で意識的に取り組めるいくつかの方法があります。

1. 時間で区切る

「〇時まで」や「〇分間だけ」と、あらかじめ時間を設定し、その時間が来たらどんなに途中であっても手と心を止める練習をしてみましょう。 例えば、家事は「午後3時まで」と決めたら、その時間以降は一切しないと心に決めます。仕事も定時でパソコンを閉じ、プライベートな時間へと切り替える意識を持つことが大切です。

2. 量や範囲で区切る

「ここまでやったら終わり」という具体的な基準を設定するのも効果的です。 例えば、「洗濯物は一回分だけ」「今日のメール返信は10件まで」「夕食は作り置きも含めて2品まで」といった具合です。この基準は、完璧ではなく「十分」と思えるレベルに設定することがポイントです。

3. 質で区切る

「完璧」ではなく、「このくらいで十分」というラインを見つける練習です。 「夕食は温かいものを出すだけで十分」「子どもの持ち物は、きれいにしてあればOK、多少の傷は気にしない」「仕事の資料は7割の完成度でも、一旦提出してフィードバックをもらう」といった考え方を取り入れてみましょう。完璧を求めすぎると、終わりのない作業に陥りがちです。

4. 心身のサインで区切る

自分の体や心の状態に意識を向け、疲労感や集中力の低下を感じたら、そこで「終わり」のサインだと受け止めることも重要です。 「なんだか疲れてきたな」「集中力が途切れてきたな」と感じたら、「今日はここまで」と自分に許可を与えましょう。無理を続けても、かえって効率が落ち、心身を壊すことにつながりかねません。

5. 「自分への許可」を出す練習

「今日はこれで終わりにしても大丈夫」という言葉を、心の中で自分に語りかける練習をしてみてください。 最初は罪悪感を感じるかもしれません。しかし、この許可を出すことを繰り返すうちに、少しずつその感覚に慣れ、自分を労わることへの抵抗感が薄れていきます。完璧主義を手放す第一歩として、とても有効な方法です。

6. 「できたこと」に目を向ける

「終わり」を設定して作業を終えた後、できたことに焦点を当ててみましょう。 「時間内にここまでできた」「今日はこれだけのことをやり遂げた」というように、小さな達成感を積み重ねることで、自己肯定感を高めることができます。できなかったことや完璧ではない部分に目を向けるのではなく、できたことを認め、自分を褒める習慣をつけましょう。

「終わり」は明日への充電

「終わり」を設定することは、決して手抜きや怠惰ではありません。むしろ、自分自身を大切にし、明日を心地よく迎えるための充電期間と捉えることができます。

完璧でなくても、ほどほどで終わらせる勇気を持つことで、あなたは「もっとがんばらなければ」という義務感から解放され、心からのゆとりと安らぎを得られるようになるでしょう。今日、あなたはどこで「終わり」にしますか。